関西日仏学館(京都)フェット・ド・ラ・ミュージック2024出演!

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6月16日(日)に関西日仏学館(京都)で開催されたフェット・ド・ラ・ミュージック2024に出演しました。

1.フェット・ド・ラ・ミュージック2024
2.パリと童謡〜現代モダニズムと日本の五音音階
3.演奏を終えて

1.フェット・ド・ラ・ミュージック2024

・フランスでは6月21日の夏至の日に、フェット・ド・ラ・ミュージックという音楽フェスティバルが開催されます。プロ・アマを問わず、全ての参加者が音楽を楽しむ全国規模の無料イベントで、都市や村の道路や広場を舞台に、老若男女を問わず幅広い観客層に向けて演奏されます。これを日本でも開催しようという企画です。

・関西日仏学館は、フランス政府が管理運営するフランス文化センター。歴史ある由緒正しいフランス語学校として有名ですが、文化イベントや音楽セミナーも開催され、現代文化が深く学べる堅実な文化施設です。

・「海外には、『日本の童謡』(をはじめ日本の文化芸術)を知りたい人がたくさんいる。しかし日本側から(海外へ向けた、日本の文化芸術)の発信や紹介が少ない。」
これは昨年、私たちのカーネギーホールでの童謡アレンジ演奏を聴いたお客様からいただいたコメントです。

毎日のように日本ではたくさんの音楽が制作され発売され、演奏会が開催されています。にも関わらず発信が「少ない」という評価は、どういうことでしょう?
それ以来、日本の文化とは?文化を(外国に)発信するとは?という疑問がより大きくなりました。

ニューヨークに続いて、再度、国際的な舞台で童謡アレンジを演奏すれば、その答えのヒントが得られるかも知れないと考え、国内外の音楽イベントを探し応募を続けていたところ、フェット・ド・ラ・ミュージックへの出場が叶いました。童謡をフランスで演奏することになったら、どんな体験が得られるでしょうか。

2.パリと童謡〜現代モダニズムと日本の五音音階

・パリ万国博覧会で、アジアの文化が紹介され、当時のヨーロッパの作曲家や画家たちに東洋趣味が広がりました。ドビュッシーやラヴェル、ストラヴィンスキーといった、パリで華やかに活躍した近代作曲家も、日本の小物や版画に関心を持ち、異国情緒を音楽作品に表しました。

・童謡は、「ふるさと」などのドイツロマン派音楽の影響が濃い近代の日本人作曲家による新作の童謡と、「あんたがたどこさ」や「かわいい魚屋さん」、「お猿の籠屋」など、ヨナ抜き(4.7.抜き)とも言われる五音音階「ドレミソラド」「ラドレミソラ」から成る(民謡やわらべ歌の)童謡があります。

現代において日本国内から国外へ文化を発信するという観点から見たら、ヨーロッパに既にあるドイツロマン派の響きの濃い日本の新作の童謡よりも、五音音階の響きの童謡の方が、日本らしさが分かりやすく際立つのではないでしょうか。

かつ、五音音階の童謡は、ファ・シのドミナントの緊張した響きが無いため、平均律による調性音楽が崩壊した後の、ポストモダン風な複雑な和音の響きへのアレンジができる可能性の余地が多いと私は感じます。

・今回私たちが演奏した曲目リストです。

1.あんたがたどこさ(肥後手毬唄・五音音階)
2.ちょうちょう(ドイツ民謡)
3.小さな素敵な森 Au p’tit bois charmant
4.たこのうた(文部省唱歌・五音音階)
5.七つの子(文部省唱歌・五音音階が変形した音階)

3.演奏を終えて

・当日は天候に恵まれ、フェスティバルは賑わっていました。音楽の生演奏が流れ、マルシェを楽しんだり、食べ物を飲んだり食べたり、活き活きとした人の賑わいは、まるでパリの蚤の市を彷彿とさせます。

学館のロビーに画家の藤田嗣治(レオナール・フジタ)の写真があり、フランスの顔と日本の顔が行き交いフランス語と日本語が飛び交い、インターナショナルな活気に溢れています。

ピアノが設置された稲畑ホールはカフェテリアに隣接していて、飲食や会話を楽しむ賑わいがすぐ隣に聞こえます。ステージには楽屋がなく、次の演目の出演者は、20分程の切り替え時間に、お客様の見ている前で舞台上で音響チェックやリハーサルを行いました。舞台は15cmほどの低さ。心理的にも物理的にもお客との距離が近かったです。

・私たちの演奏は無事に滞りなく行われました。出演時間は予定20分のうち14分でした!せっかく友好的な雰囲気で迎え入れられていて、こちらも選抜されて出場していることもあるのだから、もっと自己紹介や自己主張をしても良かったと思いました。お客様からは「そういうアレンジで来たか!」「台風の暴風雨のなかの凧揚げみたい!」「世界観がすごい個性的」「もっとフランス語の歌をもっと聴きたい」「もっとオリジナルを聴きたい」という感想をいただきました。もっとお客様との交流を楽しめば良かったです。もったいない〜(笑)!

ちなみに10年ほど前、とある来日した海外ピアニストの東京での演奏会にて、ピアニストが「次の演奏を、先月始まった〇〇紛争に死者に捧げます」という一言の後に演奏を始めるのを聞いて、衝撃を受けました。

日頃、お客様の前でついつい「間違えないように!」と身構えて演奏してしまいます。整ったお手本の演奏を懸命に思い浮かべ、指先に神経を使い慎重に音を運びます。やたらと綺麗な演奏になって拍手もいただけるのですが、せっかくお客様が集中を向ける先にあるものが、間違えないように!という警戒心だけになってしまっては残念ですね。演奏を誰かに捧げたり祈りに代えるようなことは、まだ私個人には難しいですが、出来るようになりたいと思います。

・さて、果たして童謡をフランスで演奏することはどんな体験が得られるでしょうか?大きな命題です。
日本から来た人間へ興味の眼差しが注がれる先に、私のフランスへ到達した喜びや、スポットライトへの憧れは大きく出現することでしょう。しかし加えて、ドビュッシーが感心した異国情緒以上の、日本の文化の精神世界や、現代社会の問題意識を音楽を介して描き出せるでしょうか?

フェット・ド・ラ・ミュージックでは、舞台で演奏される音楽を囲む友好的な眼差しを、たくさん浴びることができました。音楽を探究しそれを最良の形で素敵なお客様にお届けできるよう、これからも考察と挑戦を続けていきます。

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