振り返りレポート

1.ソロ音楽ライブへ

2.準備

3.本番の振り返り

1.ソロ音楽ライブへ

・音楽作りへ:音楽がくれた感動を自分からも発信したいと音楽制作をしてきました。コロナ禍や戦争が起こり、人が死ぬこと、人が生きること、その意味を切実に問う気風が高まっているのも感じます。芸術はその問いに応えられるのだろうか?と考え、今こそライブを開いてみようと考えました。

・これまでの音楽活動:作曲家たちによる共同の新作演奏会、展覧会、モダンダンス、ピアノ教室の発表会、プラネタリウム、日本文化紹介の演奏会等で音楽発表をしてきました。クラシック音楽の響きを活かしたハーモニーやメロディの感覚のユニークさに評価をいただきました。

・ソロに挑戦するまで:私のソロの発表を聴いてみたいというお声をいただいていました。グループ演奏会やコラボレーション、ユニットではなく、作家1人だけの個人的なソノリティの鑑賞に、耐えられるか!?アガるやら不安やら…ですが実践してみることにしました。

2.準備

・ソロを考える:感動を最も良い形で伝えられるような音楽形態を考え…、今回はコンピューターの打ち込み音楽をライブハウスで演奏することにしました。そしてお客様と一体になって音楽を楽しむという視点も加えてみました。

・会場:江古田ギャラリーcafé フライング・ティーポットは、展示会や映画鑑賞会、小編成の楽器演奏会が頻繁に行われる老舗のライブ空間です。コンクリートの打ちっぱなしの床と白壁、木製のベンチを置いた室内にコーヒーをドリップする香ばしい蒸気が漂っています。

・選曲:オリジナル曲、コラボレーションの曲、カルミナ名義の歌、ニューヨークの映像で制作した動画を用意しました。90年代の邦楽ポップスの恩恵を紹介しようと電気グルーヴの「虹」も用意しました。

・音源の演奏方法:PC内の音楽ソフトで制作した楽曲の音声データをスピーカーから再生(データの一部の音色を、midiキーボードで生演奏)しました。

・プログラム:曲を、性格や表題で分類し、ライブの序盤・中盤・後半で聴きたい音や響きを考え、序盤は導入として、遠くの情景が少しずつ見えてくるように曲を配置しました。

1.光
2.Hand to Hand
3.エーゲ海に沈める音楽
4.陽だまりのアリア
5.虹(電気グルーヴ)

〜休憩〜

中盤から後半にかけては快活に…、
6.Milk
7.JJ
8.Landscapes
9.Firebird
10.Moon Dance
11.Until After Dark 2014-2023,10,08(ニューヨークで撮影した動画と共に)(ダンス:青木祥子)
12.NY・セントラル・パークにて(ニューヨークで撮影した動画と共に)
13.夜明け(EDM Version)
(ゲスト:加藤希)

3.ライブ本番

・本番:あいにくの肌寒い雨でしたが、たくさんのお客様にお運びいただきました。心から御礼申し上げます。
挨拶に続いて演奏が始まります。オリジナル曲には短い紹介を挟みつつ音源を演奏していきます。

・再演:コラボレーションの打ち合わせから初演時まで、思い出が蘇ります。しかし何よりも、音楽のみ再演奏が行われていることが感慨深いです。たくさんのお客様が、私の音楽だけに静かに耳を傾けて聞き入ってくださっています。とてもありがたいことでした。

・ゲスト演奏:ボーカル入りのオリジナル曲である「夜明け」を演奏しました。歌のメロディとコードとドラムパターンだけのシンプルな作りです。歌声の個性と歌詞の説得力はとても大きいです。歌手が歌う時の、一人の人間が肉体的にも精神的にも昂る様子は、観客も高揚して華やぎます。「夜明け」は2021年のAPIA40での初演から、2023年10月のカーネギーホールではピアノ伴奏版を。N.Y.の路上フェスでは打ち込み版を演奏してきました。本ライブののぞみさんの歌声は、安定の力強さと柔らかさがありました。

・映像と音楽:10月のN.Y.滞在中、セントラル・パークの早朝の風景を撮影できました。RatRock(ねずみ岩)という岩の上に立って眺めた公園の自然や、喧騒から隔絶された公園の静けさ、そして公園に隣接する近代的な超高層ビルとのコントラストが楽しめる映像です。
 音楽は、荒削りでぶっきらぼうな静けさを感じるような音響を配置しました。岩の上で遭遇した地元の親子との会話の様子、カーネギーホール出演メンバーの青木祥子さんが岩の上で披露したコンテンポラリー・ダンスが、画面に躍動的なイメージを与えます。

・終わってみて:自分の音楽以外何も要素が無いという状況が、これまでの共同の自作自演のステージ経験と大きく異なりました。
そして、お客様の方からは、敢えてソロを企てようという意気込みを、ソロとして見届けようとする心構えが伝わってきました。
私から人に何かを発信し、それを受け取ってもらうことへの総括的な責任を持つことが大事だということを、コラボではここまで強く感じなかったのですが、今回それをとても強く感じました。

本ライブの新作音楽に再演があるか、自分次第だと思いますが、
次回再演するとしたら、ただの再演ではなく、ひと回り成熟した音楽体験として発表したいことだなと考えました。